2018年4月19日木曜日

雲英末雄旧蔵 おくのほそ道 明和W 第五種本の解題

早稲田大学図書館所蔵「おくのほそ道  明和版 文庫31 A0151」を当ブログでは「明和W」と表記しています。早稲田の書誌によると、この本は雲英末雄旧蔵とのことです。
故・雲英末雄氏のご研究と文献蒐集のご努力に敬意を表します。


「元禄版 おくのほそ道 雲英末雄編」によると、明和版は、A・B・C・Dの4種に分類されます。しかし明和Wは、この4種とは異なる部分が存在します。そこで、雲英末雄に倣って解題を試みようと思います。

  おくのほそ道 明和W   早稲田大学図書館  文庫31 A0151

書型 枡型本。見返しの部分に墨書きで「(縦五寸五分/横四寸七分)」と書かれている。早稲田大学図書館の書誌には、17.8×14.0cm とあるが、16.8×14.0cmの誤りと思われる。(表紙の脇に置かれたメジャーの画像は、17cmくらいに見える。)

おくのほそ道 明和W 表紙 表記検証のため掲載

明和W 早稲田大学図書館所蔵「おくのほそ道  明和版 文庫31 A0151」

・上記、明和Wの掲載画像は(400337pixel) で、比率はおおよそ、100:84 であるが、早稲田大学図書館書誌の(17.8✕14.0cm)では、おおよそ、100:79 となり比率がまるで違ってしまう。見返しの書き込みの「5寸5分(16.665cm)×4寸7分(14.241cm) 」の比率はおおよそ、100:85 となり掲載画像と大体一致する。因みに、雲英末雄の明和版Bの解題では、16.65cm×14.2cm 100:85となっており、明和Wの見返しの書き込みとほぼ一致する。

表紙 砥粉色地に信夫散し文。(雲英末雄の分類による「明和版B」と同じ表紙)
・雲英末雄は、この文様を「杉菜散し文」としているが、「表紙文様集成 第25号別冊 国文学研究資料館」には、 奥細道菅菰抄を例として「信夫散し」とある。
「信夫」は、おくのほそ道の「しのぶもぢ摺」の「しのぶ草(信夫草)(忍草)」のことであるとも言われる。また、着物の柄などでは、「羊歯文」と呼ばれることもある。


信夫文字摺之記
・この石の周りの植物が、シノブというシダ植物である。


信夫草

題簽 中央 剥落により無表記。

丁付 計57丁半。55丁の素龍の跋から、柱に「一」(~「四」)とある。
見返しの部分に墨書きで、「(本文五十三枚/奥書一枚/附録四枚)」とある。

 1. 無署名の跋 (54a-54b.02)
  2. 元禄七年初夏 素龍書(跋) (附録1-2)(55a-55b.02)
  3. 元禄八乙亥九月十二日門人去来拝(跋) (附録1-3)(55b.03-57b.03)
  4. 明和七年寅年十月翁忌の日 蝶夢書之(跋) (附録3-4)(57b.04-58a)

文字削除の部分の確認のため参照
55b.03 (素龍の跋)「伏して村肝(本ノマゝ)を刻む」

明和I明和W

刊年書肆 54丁裏(54b.06)は、元禄版や明和Iに見られる「京寺町通二条上ル町/井筒屋庄兵衛板」が削除され、「洛陽蕉門書林 井筒屋庄兵衛/橘屋治兵衛」に差し替えられている。なお書肆名の前に「奥細道拾遺 全一冊 出来/奥細道菅菰抄 全二冊 出来/同附禄 全一冊 追ラ 出来」の宣伝広告を示す(54b.03-05)。刊年は誌されていない。

特異な割付のため他版参照 54b-55a

上から、元禄K明和I明和W寛政K
・元禄Kでは、54丁の無名跋の後に「京寺町通二条上ル町/井筒屋庄兵衛板」と書肆情報が示され奥付として本を締めくくっている。
・明和Iでは、元禄版54丁の後に、素龍・去来・蝶夢の跋を付け足したしているため、54丁の元禄版の書肆情報はそのまま残っている。
・明和Wは、54丁の元禄版の書肆情報を削除して、新たな書肆情報に差し替えている。「元禄版 おくのほそ道 雲英末雄編 勉誠社」の明和版Dの解題によれば、明和版Dも54丁の元禄版の書肆情報は削除されているが、明和Wのように、新たな書肆情報に差し替えられることはなく、新たな書肆情報は後表紙に示され奥付として本を締めくくっているようだ。

雲英末雄の明和A・B・C・Dの分類と明和Wについて
・「明和版A」は、愛県大の明和I・立命館の明和Rに対応する。
・「明和版B」は未見。雲英末雄の解題によると、明和版Aとほぼ同じであるが、明和Wと同様に、55b.03 (素龍の跋)「村肝(本ノマゝ)を」が削除されている。
・「明和C」は未見。雲英末雄の解題によると、新たな書肆情報は後表紙にはめこまれている。
・「明和版D」は未見。雲英末雄の解題によると、 旧い元禄版の書肆情報が削除されている。新たな書肆情報は後表紙にはめこまれている。
 ・「明和W」は、旧い元禄版の書肆情報が削除され、新たな書肆情報に差し替えられている。
  以上より、明和Wは、明和A・B・C・Dとは違った要素があり第5種本と言える。

国文学研究資料館 元禄K寛政K別版K其角堂蔵版(永機)奥の細道
愛知県立大学図書館  明和I寛政I奥細道菅菰抄I
立命館大学図書館 元禄R明和R寛政Rおくのほそみち 
Google ブックス 慶應義塾大学 元禄G 後ろから表示される。
早稲田大学図書館  元禄A 元禄B 元禄C明和W寛政A 寛政B

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              ブログ編者
はじめに
底本と主な参考文献
ひらがなの字母
表紙 000 
1.序章 001 002 003.03
2.旅立 003.03 004 
3.草加 005 006.05
4.室の八島 006.06 007.05
5.仏五左衛門 007.06 008 009.01
6.日光 009.02 010 011 012.03
7.那須 012.04 013 014.06
8.黒羽 014.07 015 016.07
9.雲巌寺 016.08 017 018 19.07
10.殺生石・遊行柳 19.08 020 021.02
11.白河の関 021.03 022.06
12.須賀川 022.07 023 024 025.05
13.あさか山 025.06 026.06
14.しのぶの里 026.06 027.07
15.佐藤庄司が旧跡 027.08 028 029.07
16.飯塚 029.07 030 031.08
17.笠島 031.08 032 033.03
18.武隈 033.04 034 035.01
19.宮城野 035.02 036 037.04
20.壺の碑 037.05 038 039 040.03
21.末の松山 040.04 041 042.04
22.塩竈 042.04 043 044.04
23.松島 044.05 045 046 047 048 049.05
24.石巻 049.06 050 051.07
25.平泉 051.08 052
053 054 055.01
26.尿前の関 055.02 056 057 058 059.01
27.尾花沢 059.02 060.03
28.立石寺 060.04 061
29.最上川 062